J-GAP Taiwan第25回例会議事録(全文PDF

習ってすぐに使えるようになる日本語コースのデザイン

~到達目標の設定と評価~

日時: 2014年9月27日(土) 13:00~17:00 (12:30~受付)

場所: (公財)交流協会台北事務所 B1 文化ホール

講師: 加藤稔人 (中華大学応用日語学系 助理教授)

賛助:国際交流基金

目的:
1.実際使用場面を想定した到達目標を設定できる。

2.目標を達成したかを測るのに妥当な評価法を選べる。

3.到達目標と評価内容に合ったシラバスを作れる。

参加者:32名
加藤稔人 陳淑娟 工藤節子 賴美麗 馮寶珠 黃鈺涵 施信余 陳姿菁 孫寅華 荒井智子 陳文瑤 周欣佳 内田さくら 管美燕 李尚軒 磐村文乃 内田陽子 稲葉紫穂 王怡人 下元宏展 黄麗雲 芝田沙代子 吳欣芳 陳勁翰 小池一平 廖育卿 池田晶子 楊淑惠 武田牧人 許慧如 羅暁勤 張瑜珊(大学、中等教育、補習班の日本語教師、院生)

 

時間 内容
13:00-14:00 今日の目標1.実際使用場面を想定した到達目標を設定できる。2.目標を達成したかを測るのに妥当な評価法を選べる。3.到達目標と評価内容に合ったシラバスを作れる。オーストラリアの日本語学習状況学習者が多いコミュニケーション能力重視1.運用能力を到達目標とした日本語コースが全国で普及オーストラリアでは20年以上前から始まっていた。2.毎回の授業のはじめと終わりにobjectivesを確認・シドニーで使われていた教科書を見る 英語を用いてobjectivesが書かれていた。

3.実際使用活動を組み込んだコースデザイン

学習開始9週で日本人ゲストを教室に招いて日本語によるコミュニケーション

・現在中華大学で学習開始12週のビジターセッションの様子を見る。

どうして実際に使用活動をするのか?

具体的かつ明確な到達目標を与える

J-GAP Taiwan第25回月例會a

J-GAP Taiwan第25回月例會a

1.早期に目に見える成果。

2.コミュニケーションは楽しい。

3.近い将来に日本人に対して使うことが分かっている文型や単語の練習は現実味があって効果が高い。

4.実際にいつ使うかわからない文型や単語を覚えるのは現実味に欠け効果が低い。

5.すぐに成果を出さなければ日本語を使って何もできないまま学習を終了。

日本人とまとまった会話はできないまま学習終了

6.教室でのドリルやロールプレイだけでは実際に日本人とコミュニケーションする能力は身に付かない。

実際のコミュニケーションには多くの制約

やり直し不可、共有知識の有無

実際に相手に悪い印象を与えたり、不利益を被る危険性

 

オーストラリアでは人的リソースの制度がある

家庭訪問では 何を質問するかだけでなく、事前にお土産を考えたり、訪問後のお礼状を書いたりなどもする。

・中華大学の街頭インタビューの様子

・ビジターセッション 練習ではない真のコミュニケーションをする。

様々な問題に直面する → コミュニケーション上の問題に対応するためのストラテジーを練習する。

中華大学では

日語会話(一)の大目標

1.中華大学を訪問した姉妹校の教員や学生と流暢かつ適切なコミュニケーションができる。

2.中華大学の日本人教師と流暢かつ適切なコミュニケーションができる。

注意

ただ教師以外の日本人と話す機会を与えるだけではいけない

コースデザインの段階から具体的な準備が必要

知っている≠できる

社会言語 談話構成 ストラテジーを勉強することが必要

 

到達目標の設定

1.「~できる」という能力形式で

2.Outcomesは明確かつ具体的に

○「日本に行ってマクドナルドでハンバーガーを注文できる」

×「基本会話ができる」→基本会話は人によって違う

 

Q クラスの能力の差が激しい場合はどうすればいいのか (稲葉先生)

マクドナルドで注文する N1にとっては簡単すぎる 50音がやっとの学生は難しい

A 中華大学ではクラスのレベルが同じである。

学生によって異なる目標を立てる必要がある。それぞれの学生に応じて達成度を変える。

 

Q 發音に問題があるのではないのか。どんな教科書をつかっているか。学生は一クラス何人か。(黄麗雲先生)

A 教科書は自作教材 学生数は一年生30名弱 發音の場面においてはタスク達成を目標としているので發音や文法が正しいことよりも、タスクが達成できることを重視する。

 

Q ObjectivesやGoalsは授業前に確認できているか。学生の能力の差はどうするのか書いたものを暗記している学生についてはどう評価しているのか(陳先生)

A できるだけ確認するようにしている。書いて準備したものも、試験の先生の前で話せれば大丈夫テスト中は見ることができない。

 

Q ビジターセッションはテストの評価に含めるのか。グループワークの学生の貢献度については(齊藤先生)

A 中華大学ではビジターセッションは評価対象にしていない。ニューサウスウェルズ大学では評価対象としていた。教員が見て回って評価していた。ビジターセッションはあくまでも到達目標としてのものと考えている。

 

14:00-15:00 グループワーク実際に担当する(可能性のある)コースの到達目標を設定する。到達目標の設定1.具体的な日本人を相手とした実際使用場面で「~ができる」という目標の設定2.コース終了前または近い将来に学習者にその実際使用の機会がある。A グループ中目標1.自己紹介 出身 専攻 趣味2.相手の名前などを聞く3.そこの国に行った際のことを聞くBグループ

大目標

インターネットで買い物、予約ができる

中目標

商品を交換する 質問する 予約する

C-1グループ 東海大学

J-GAP Taiwan第25回月例會b

J-GAP Taiwan第25回月例會b

大目標

先生、TAとのやりとり 学生同士(台湾人)とのやりとり

中目標

誕生日おめでとう

わからないところをきく

欠席の連絡

さそい

お勧めの店を紹介

ポートフォリオの表紙を作る。

C-2 グループ 高校生

大目標

姉妹校の学生と交流ができる。(1年に一回の交流がある)

中目標

自己紹介ができる。

キャンパス案内をする。

Dグループ

大目標

日本へ個人旅行に行く場合

中目標

困った時に問題を解決する。 忘れ物 警察

自分の知りたい情報を入手する。 ホテル 名所 土産物

交通手段をうまく利用できる。 標識 指示など

初めて会った日本人と楽しく会話できる。

Eグループ

日本語専攻1年生

大目標

母語話者に対して(姉妹校の生徒、ミニガイド)

自分のことを紹介できる。

相手のことについて

簡単な情報を聞き出すことができる。

中目標

台湾の観光地(夜市)食べ物について 簡単に説明することができる。

Fグループ

補習班 状況が様々である 。

小目標

日本人の家を訪問するときのマナーが分かる。

お土産をもらった時に感謝を表すことができる。

評価目標と内容の設定

1.授業で教えたことを試験に出すのではなく、事前に到達目標に掲げたことを試験にする

2.コース初日に試験の概要と評価表を配布して評価内容を学習者に伝える

3.到達目標が達成されたかどうかをできるだけ現実場面に近い方法で測る

運用能力の試験

信頼性よりも妥当性を重視する

 

15:0016:00 評価のグループワークそれぞれ先ほど考えたコースについての評価を考えるFグループ ロールプレイ補習班では評価が避けられがち学習者間で評価する できたらシールをもらう ルーブリックの最後の項目ではマイナスの言葉は入れない補習班では何かができるという目標設定をするならば個人個人目標を考えていく必要があるのではないだろうか(東海大学小池先生)自己評価を取り入れたらどうか 一冊ノートを買って毎回自己評価を記入していく方法もある。Eグループ教室内に夜市を設置する 教師やTAをつれていき食べ物等の説明をする最後に教師にインタビューする

Dグループ

ロールプレイ

1.会話の円滑な導入・終了

2.目標達成

3.適正性

レポートで情報を整理してまとめる

C-2グループ

ロールプレイ

先生が日本人の高校生を演じる。

校内を案内する時の会話を評価する トイレへ行きたいと言われた時など、どうこたえるか

C-1グループ

構造シラバスとタスクシラバスを組み合わせて

1.タスクをメールで送る。

2.構造 翻訳の練習 中国語を日本語に訳させる。

3.相互評価 ポスター FB PPT

4.自己評価 日記

Bグループ

J-GAP Taiwan第25回月例會c

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ロールプレイ

架空の買い物サイトで買い物してみる。

商品 送料についての質問をさせる。

間違えたものを送りそれに対処させる。

実際のホテルや民宿のHPをみて

教師に質問させる 空き部屋や朝食部屋の希望を伝える。

情報を読み取る練習として読んだHPの情報をFBやブログに書かせる。

Aグループ

学生と1対1で相手に自己紹介をする

学校の先生、学生によって自己紹介の仕方が異なる。

姉妹校にキャンパスを紹介する

16:001630 シラバスデザイン習ってすぐに適したシラバス適さないシラバス構造シラバス構造シラバス → 学習者がすぐに何かをできるようになるという視点はない会話の場面は文型導入のついでの後付になっている学習者に本当に必要でまとまった場面設定はできない場面設定がバラバラで各会話場面の関連性がない台湾で学ぶ学習者がいつ使える?日本語GOGOGO構造シラバス

やはり場面設定がバラバラである

学習者の到達目標はどこで、誰に対する、どのような会話なのか

トピックシラバス

長所

学習者に必要な場面やトピック、機能から学習すれば、習ってすぐにつかえるようになる。

短所

習っていない場面や話題、機能では対応が難しい。

実用性と効率重視のコース

1.到達目標設定

2.評価内容決定

3.シラバス作成

4.教材作成/選定/修正

学習動機や目的が異なるすべての学習者に対して万能の日本語教材はない(地域や目的によって必要なものや優先度は異なる)

市販の教科書そのままでは対応できない

国際交流基金「まるごと」

台湾でそのまま使うことはできない

わたし 私は台湾人です。私は学生です。

食べ物 台湾の食べ物がない

買い物 台湾国内で日本語で買い物する機会はあまり多くない。

 

シラバス

構造シラバスの教科書の完全否定ではない。

能力試験対策などには適している。

中上級を目指して集中的に受講できる場合は体系的な文法積み上げも無駄ではない。

コミュニケーション能力を効率よく向上したいなら構造シラバスの教科書は適さない。

初級で学習を終わる学習者に文型だけを中途半端に積み上げても何でもできるようにならない

授業

1.コース初日にgoalsと評価内容を学習者に配布して説明する。

2.毎回の授業のはじめにその日のobjectivesを学習者にアナウンス。

3.毎回の授業の終わりに事前に行ったobjectivesを達成したかを確認。

4.練習内容と試験との関連を頻繁に伝え、常に試験(=到達目標)を意識させた練習、活動を行う。

5.到達目標と同じ/近い場面設定で練習、活動をする。

6.会話文の朗読や学生同士のペアワークだけでは実際場面で対応できない。

最後に

1.すべての授業が実際使用活動を組み込む必要はない

2.多様な学習者のニーズに対応するため、いろいろな授業が必要なのでは

台湾国内で学ぶ学習者が効率的かつ効率的に日本語を使って何かができるようなコースデザインの普及を!

 

16:30-17:00 まとめ・質疑応答Q日本語学科の学生が対象ではない会話の授業ではこれからTAを使って

J-GAP Taiwan第25回月例會d

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授業を行うようにしようと考えている。(黄先生)QTAの予算が厳しくなっていているので、よくできる学生を活用していくのも一つの方法である。(工藤先生)Qもしも姉妹校等がなければ人的リソースはどうするべきなのか(下元先生)A姉妹校以外でも人的リソースを活用する方法がある地域の日本人を使ったり、知り合いの日本人を呼んだりしている。日本人観光客なども活用できる。名所名所に行ってインタビューする。Qオーストラリアでのビジターセッションの経験は台湾ではなかなか難しいが、それを台湾で実現させている加藤先生の功績は大きい。(陳先生)Qこれからはレベルでつながりが見えてくるA1コースの会話A2コースの会話となってこれば次のつながりになっていく(陳先生)Aそれぞれの環境によって授業をデザインしているので他の学習者に当てはめて作っていくのはなかなか難しいオーダーメードで作られた授業。(加藤先生)

 

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